【作品解説】

□ title  CAFE.1  CAFE.2  CAFE.3  CAFE.4  CAFE.5  CAFE.6  CAFE.7

 

■CAFE.1
とあるカフェの朝。開店に向けてお客様を迎える準備を整える店長(武田)および店員達(大村・寺元)
笑顔と勢いをモットーとしたこの店の朝礼は必要以上にハイテンション。遅刻した店員(松本)には、恒例の罰ゲームが待っている。
全員揃っての発声練習を終え、本日も開店です。

これまでの公演では、ほとんど舞台セットを使う事のなかった我々。
今回はテーブルがある。椅子がある。カウンターの上にはコーヒーメーカーや鉢植えまで。会場の雰囲気と相まってまるで本当のカフェのようでしょう? そうでしょう?
そんな雰囲気をあえてブチ壊す為に書いたこのオープニングの演目。役者陣からは「やりたくない」の声続出。
演目中の「罰ゲーム」でモノマネをする羽目になってしまった松本さんは、嫌がっていたものの小屋入りしてからも練習に余念がなく、「今日のモノマネこれでいい?」と、毎日確認を。何も日替わりにしてくれなくとも良いんですが…。

   
■CAFE.2
静かなカフェの午後のひととき。しかしそれはあまりにも静かすぎた。
同じテーブルについた二人の客(大村・寺元)は、先程から一言も会話を交わさずピリピリした雰囲気をかもし出しており、このカフェの店長(松本)は気が気ではない。ようやく喋り始めたものの、険悪なムードは増す一方。どうやら一人の男性をめぐってもめている様子。
そこへその男性(武田)が現れて…。

心の声シリーズ第4弾。今回は二人の客の話を盗み聞きする、店長の独り言。
今回の録音セリフはひとつひとつが長く、そしてきっかけも多く、音響さんに軽く怒られる。
しかし慣れたもので、某スタジオで行われた松本さんのセリフ録音はあっという間に終了。素晴らしい。
だがスケジュールの都合により、録音したセリフと実際の動きを合わせる稽古が本番直前までできず。ギリギリで完成した演目。

   
■CAFE.3
商店街の片隅にある古びた喫茶店「純喫茶マリアンヌ」から、今流行りの全面ガラス張りのカフェ「スター“マックス”コーヒー」に改装したばかりの店内にて。
お洒落になった店に終始上機嫌な店長(大村)と、これまでとのシステムの違いに戸惑うバイト店員(寺元)。
通りがかった商店街の会長(武田)と、カフェのお洒落な雰囲気に興味津々な娘・静香(松本)に新しい店を自慢しようと招き入れる店長だったが…。

あのガラス張りのカフェ。好きじゃないんだよ。煙草吸えないとことか、気取った雰囲気とか。
というわけで書いてみました。反抗精神をコントに。
この演目では、稽古を重ねる度にどんどん大きくなっていった大村さんの動きが見どころかと。寺元さんもそれに対応するのが大変だった様子。
そして標準語に近い言葉を話す札幌出身の我々にとって案外大変だったのが、武田と松本の“訛り”。これはメンバーの函館出身・制作部長澤氏、留萌出身・舞台部下家氏にご指導ご鞭撻を賜りました。しかし、山形出身の代表大江氏によると「武田さんの訛りはきれいすぎる!まるでフランス語のようだ!!」との事。試しに山形の方言で喋ってもらったところ、全く聞き取る事ができず…。いくらなんでもボツです。
そして今回公演では、初めて衣装らしい衣装も着用した我々。この演目での松本さんの姿は注目ポイントかと。


   
■CAFE.4
一見ごく普通のカフェ。しかし普通であるが故に、他の店との差別化を図ろうと、店長(大村)が打ち出した企画は「占いのできるカフェ」それに批判的なシェフ(武田)だったが、店員(松本)にも押し切られ、「本日の占い師」を担当させられることになる。
そこへ雑誌の広告を見た客(寺元)がやって来るのだが…。

数年前、何故だか今さらスチャダラパーにはまっていた時期がありまして。
語呂合わせとか好きな自分はラップなどは大変楽しく、うすぼんやりと考えていたら「運気上昇・売上げ好調・株式市場一部上場」というフレーズが浮かんだもので紆余曲折、ラップで占いの演目を作ろうと思い立ったものの、ストーリーの流れに沿うセリフで韻を踏んだ挙げ句リズムに乗せた台本というのを書くのは困難を極め、深夜机の前でひとりリズムを刻みつつ苦悩した思い出が。
役決め時、松本・大村ははなっからラップを拒否。よって無条件で武田・寺元が担当する事に。
しかしながら、苦労して書いたラップ部分はもはや歌詞のようであるせいか、大変覚えやすかった記憶が。

 

   
■CAFE.5
クラシック音楽が流れる、落ち着いた雰囲気の喫茶店。
文芸誌の編集をしている柏木(松本)は、以前小説の持ち込みをしてきた神田(大村)に呼び出されていた。
作品への意見を求められ、「平凡でありふれた人間の書いた自伝小説」と一喝した柏木だったが、その小説は柏木のこれまでの人生を綴ったものだと知らされる。
とある場所で“ひとりの人間が生まれてから死ぬまでの人生が書かれた本”の管理をしているという神田。元々は小説家志望だった柏木に、白紙のまま途中で止まっているその小説の続きを書いてみないかと持ちかける。神田は「あなたがその本に書いた通りの人生が送れるかもしれない」と言うのだったが…。

自分はよく、何かにつけてどうしたら良いものだろうかと思い悩む方なのですが、ある本に「“もしあの時こうしていれば”と思ってもそれは無駄な事だ。その時そうしなかったのだから、“もし”という事を考える事自体無意味である。」というような一節があって、それが印象に残っていて。
そしてある時、自伝小説というものについてふと考えておりまして。自分の過去を振り返る記録ではなく、この先に起こる事が既に書かれている自分の人生を綴った本、なんてものが存在したらちょっと怖面白い…と思ったのでこんな話を書いてみました。
4人全員が出演するものの、ほとんどが松本・大村の会話劇なので、2人のセリフの量は膨大。店長役の私はカウンターの後ろでグラスを拭く等の小芝居をしつつ、2人のセリフが飛びやしないかと終始ドキドキしておりましたが。

   
■CAFE.6
西部の田舎町にあるさびれたカフェバー。女主人・ローズ(寺元)が切り盛りするこの店に、流れ者のジョージ(武田)がやって来る。彼は自分の店でシンガーをしていて突然姿を消したボニータという女を探して旅をしていた。
そこへやって来たのが、ローズの店に毎日野菜を届けている娘・コゼット(松本)。彼女こそボニータ本人であり、都会での生活に疲れ、名前を変えてこの土地で暮らしていたのだった。
ボニータを連れ戻そうとするジョージだったが、そこへコゼットの婚約者でもある保安官(大村)が現れて…。

自分的にカウボーイブームが来た時期がありまして。えぇ、脚本は大体マイブームで書いております。
なのでちょっとそんなのもやってみようかと。折角カウンターもあるんで。
テンガロンハットやスカーフやらは自前で揃えられたものの、銃とか、保安官バッチとか、馬とか…。
もう無理なんで、あえて全てオモチャっぽくした結果、くだらなさも倍増です。
この1本は4人それぞれのキャラが立ってた気が致します。
そういえば寺元さん、初のセクシーキャラでしたね…。

   
■CAFE.7
とあるカフェの閉店後。本日も力の限りのテンションで接客に励んだ店長(武田)および店員達(松本・大村・寺元)
笑顔と勢いをモットーとしたこの店では、一日の業務を終えると皆心底ぐったりで、終礼中に倒れる店員の姿も。
本日ご来店頂いたお客様への感謝の挨拶を終え、これにて撤収です。

ま、開店で始まったんで、閉店で終ろうかと。それだけです。
個人的には卒倒して立ち上がろうとする大村さんの「生まれたての仔鹿的動き」が好きでしたが。

   
□ 第5回公演を終えて
劇場ではなく、もっとこじんまりとしたアットホームな雰囲気のところで、なんならお茶でも飲みながらゆっくりと公演をご覧になって頂きたい。
というコンセプトで始まった第5回公演の会場探し。カフェやらフリースペースやらをあちこち見て回ったのですが、やはり仕込みを含め1週間近く会場を押さえられる場所というのは限られ、ようやっとたどり着いたのがレッドベリースタジオ。
シャープな印象のBLOCHとは違い、白くて明るいカフェのような雰囲気。
当初の「カフェで行う公演」という目論みは敢え無く断念したものの、会場の雰囲気に合わせて急遽「カフェでの話の公演」に変更。このような形になりました。
カフェっぽさを演出する為、いつもの白い箱イスはカウンターに変身。
テーブルと椅子も設置。カフェエプロンも作ってもらい、今までの公演とはまた違った雰囲気に。
まぁやってる内容はいつもと大して変わりませんが。いつも通り、ゆるく・ぬるく・くだらなく。
フラットな床に階段を作って客席を配置しているもので、舞台の前側と客席の最前列があまりにも近くてびっくりした記憶が。
初めての会場で勝手がわからない事もあったのですが、レッドベリーの方が大変良くしてくださいました。感謝するばかりです。

そしていつもと違い、ちょっと郊外にある会場まで足を運んで下さったお客様方、本当にどうもありがとうございました。
しかし座席数が限られていた為、当日券が出せず、入場をお断りせねばならぬ事態も…。折角来て下さったのに本当に申し訳ない限りです…。

さて、CAPSULEですが、大体の場合、公演を行う時にはその次の公演の予定が決まっておりません。今回も然り。
次はいつどこでなにをやるのやら…。
どうか今後も暖かい目で見守ってやって下さいませ。

[作・演出 武田美穂]
 

 

 

 

actor

武田美穂
松本奈緒子
大村朋子
寺元彩乃


staff

舞台監督/照明 大江芳樹
演出補佐 小川尚子
音響 岩渕民里子
制作 河田春菜
長澤真理絵
宮田碧
佐藤琴美
佐藤さなえ
舞台部 下家弘