【作品解説】

□ title  1. 社内会議  2. 在庫過多  3. 割物注意  4. 決行前夜  5. 深夜残業
       6. 在庫整理  7. 休日出勤  8. 作戦決行  9. 時代錯誤  10. 有言実行

 

■社内会議
とあるビルの一室。社名変更に伴い、新しいシンボルマークを考えねばならない事になった5人の社員達。
人をモチーフにしたマークをという社長の提案に、色々と試行錯誤するもなかなかいい案が浮かばず、結局は出入りの運送会社の社員を巻き込む事態に発展する。

凝ったオープニング映像で幕を開けた第4回公演。それに反して格好悪く始めようと思った1本。
ポージングの多かった鈴木と南風は、決めポーズをほとんど自分達で考えてくれました。有り難かった。
今回の公演では出演者が6人。5人ではできない3段のピラミッドが6人だったらできるという、役者に復帰した大村へのオマージュを含んだ演目でもある。地味に。
どなたもお気付きではなかったのでしょうが、作者はそう思って書いたのである。

   
■在庫過多
とあるビルの一室。「夢のある商品を提供したい」と、意気込んでベンチャー企業を立ち上げたものの、まがい物のTシャツや等身大ガンダムプラモデルなどおかしな物ばかり仕入れてくる戸田と田所の2人。そのせいで社内は在庫商品のダンボールで溢れ返っている。
業を煮やした塚本が新しい事業に目を向けようと提案するも、なかなか具体的なプランは浮かばずじまい。
そこへ田所宛に届けられた通信販売の商品を見た戸田は、起死回生の一案を思いつくのだが・・・。

ほぼ全ての演目がリンクしていた今回の公演。その軸のひとつとなる、在庫シリーズの一本目。
漢字のTシャツを使う事は最初から決めていたのだが、書いているうちに会社の敷地にガンダムが置いてある設定がいつの間にかできてしまい、結果「作戦決行」という演目が生まれたのであった。
演目中のプロジェクトX風の場面では、どんどん芝居が大きくなる戸田(松本)と、髪を振り乱して地上の星を歌う田所(寺元)の動きが見ものであった一本。
公演後の打ち上げのカラオケでは、寺元は地上の星をリクエストされ、鈴木がそれに合わせてナレーションを付けていた。
阿呆だ。いや、面白かったけど。

   
■割物注意
とあるビルの一室。骨董品を扱う社員2人だけの小さな会社に、とても高価でかなり貴重だというワレモノが運び込まれた。
浮き足立って落ち着かない社長はいつもより輪を掛けて不注意になっており、何度も貴重なワレモノを落としてしまいそうになる。それをすんでのところで何度も受け止める社員。
そして道を訪ねに来た怪し気な人物に、社長はワレモノの事を自慢気に話してしまうのだが・・・。

実際の道具を使わずに実際には無いものを有るように見せる事ができるパントマイム。CAPSULEでは度々これを使用するのですが、そのパントマイムを使って何かできないだろうかと考えて生まれた演目。
「ワレモノ」が実在しないので、途中で形を変えてしまう事もできれば、有り得ないほど機敏な動きでキャッチする事もできる。色々に使えるのである。便利なのである。
落ちたワレモノを社員(鈴木)がスローモーションで受け止めるシーンでは映画マトリックスのBGMが使用されたが、これは音響・岩渕嬢からの提案。結果、大変に臨場感のある馬鹿馬鹿しさが増大。有り難い事である。
南風演じる社長が大変愛らしく、共演する役者は笑いを堪えるのに必死であった。皆スーツなのにひとりだけカーディガンである。ネクタイの結び目が尋常ではない大きさである。
鈴木演じる社員の野村(鈴木本人の個人的趣味から命名)はちょっと男前で、何でも松本のタイプだそうで、そんな理由で写真を撮りまくられていた。

   
■決行前夜
とあるビルの外。そのワレモノの話を聞いた怪し気な人物・コウちゃんは、遊び仲間のひでポンとよしりんを呼び出し、そのワレモノの強奪計画を練る事にした。
取りあえず形から入ろうと、サングラスに黒いスーツに黒ネクタイのギャングスタイルで決めた3人。
コウちゃんが護身用にと手渡した拳銃を見て大喜びする映画好きのひでポンとよしりん。
しかし一見完璧に見えた彼等の計画には意外な落とし穴があるのであった。

今回の脚本を書く為に映画を何本か観たのですが、そのうちの1本がクエンティン・タランティーノのレザボア・ドックス。
確かにギャング内におけるあだ名問題は重要です。と、思って書きました。
あと、今回の衣裳は折角黒スーツだし、個人的にはギャングっぽい格好をしたかったので。そいうのが好きなので。
サングラスをかけた大村が非常に男前。見ものです。でも阿呆な役です。見ものです。
サングラスをかけた南風はやはり南風。この演目では南風にはほとんど演出をつける事がありませんでした。あまり作り込まない状態で演じて戴きました。その方が面白いと思ったので。
本人は「私にも演出つけてよ〜!」と大層ご立腹でしたが。そんな意見は無視で。

   
■深夜残業
とあるビルの一室。大きなプロジェクトを控え、今日も深夜まで残業をする大杉部長と新人女子社員の佐伯。
ようやく仕事が一段落し、2人が握手を交した途端、お互いの心の中の声が聴こえ始める。
そして紳士的だった部長の態度が豹変、何とか女子社員を誘い出そうとするのだが・・・。

実は随分前から考えていた一本。きっかけはもう忘れました。本当にもうかなり前の事なので。
公演の度に何故だかいつも最後の最後に回される事の多い武田・松本組の稽古。この演目も例にもれず最後に回され、ほとんど稽古時間が取れませんでした。なので稽古場ではなく、稽古後の居酒屋やカフェで深夜に稽古をした想い出が。いや、稽古というより打ち合わせ程度なんですが。
そして2人の「心の中の声」は演出補宅で録音されました。スタンドマイクを前に台詞を絶叫する姿はさぞ滑稽だった事でしょう。

   
■在庫整理
とあるビルの外。戸田と田所と塚本の3人が抱えた在庫商品のTシャツを何とか売ろうと、某通販番組そっくりな企画を立ち上げた。
スタジオを貸し切り、モデルを雇って、やる気満々の田所と戸田。一向にやる気の出ない塚本。
どうにかして某スポーツブランドそっくりなTシャツを売ろうとするのだが・・・。

また踊ってしまいました。踊る気はさらさらなかったのですが、流れ的に踊った方が良いかと思って。その方が更に馬鹿馬鹿しいかと思って。
稽古場で振りうつしをする時間が取れなかったので、演出自らが踊るダンスをビデオカメラで撮ったマニュアルビデオを作成。ダビングしてダンスチームに配布しました。
稽古場では何故か踊らない役者やスタッフも一緒になって練習していた事が印象的です。嗚呼、阿呆ばかり。
個人的には塚本(鈴木)の細かい表情がお勧めポイントの一本。本当に目が離せない人です。

   
■休日出勤
とあるビルの一室。テレビでは夢のテレビショッピング「ジャパネットたけだ」がオンエアーされていた。
そんな一日、本来は休日であるのにも関わらず出勤する事になって終始不機嫌な先輩。そんな先輩にからまれながらも、健気に働く後輩。
そこへ出勤してきた社長はやたらとテンションが高く、同じくテンションの高い先輩とは気が合うようで、ますます疲れる後輩。
ちょっとした個人の感覚の違いが色々と問題を起こす。そんなお話。

朝、昼、夕方、夜、深夜。などという時間の区切りが、自分の中ではっきりありまして。
自分の場合、午後4時〜6時までが夕方だったりするんですが、そういうのは個人個人あるものではないかと。そういうののとらえ方が各々で違うと色々と問題が発生するのではないかと。そう思って書いた演目なのです、と。振り返ってみれば今回の公演の中で一番まったりとした一本ではなかったのかと。
当初の台本にはなかったものの、劇場入りしてからの打ち合せ中に急に加わった、先輩(松本)が歌うピザえもんのテーマソング。
当のご本人、どうやらドラえもんの歌をあまり御存知なかったようで、パクったものの歌詞が滅茶苦茶でした。個人的ツボ。

   
■作戦決行
とあるビルの前。いよいよ強奪作戦を決行すべく、意気込んでやってきたコウちゃん、よしりん、ひでポンの3人。
しかしそのビルには何故かガンダムがそびえており、ちょっとテンションが下がるのであった。

演目がリンクしているということは流れによってはこういう遊びもできるのだね。
という見本のような一本。時間にして30秒足らずのコント。最短記録更新です。
「えぇ?これだけで終わり?」ってような感じが欲しかったので。作戦成功です。
しかし演目自体の長さとしては短かったものの、前後の話との繋がりで役者の衣裳替えが大変でした。舞台袖はてんやわんやだったのでございます。

   
■時代錯誤
とあるビルの一室。本日は見事な日本晴れ。
株式会社 時代錯誤では、天下統一を目論む殿とその護身を務める忍者影丸の手合わせが日課となっている。経営全般を取り仕切る蘭丸の手腕もあってか、業務は好調。業績は上々。殿も上機嫌だ。
そこへアメリカナイズ甚だしい営業マンが現れ、殿御立腹。そやつを斬ろうとするも、それを制止するのに登場したのは・・・。

CAPSULEでは日頃から「姫」と呼ばれている人物が居りまして。日常の言動が姫っぽいので、彼女は時より姫と呼ばれておるのですが、第3回公演の打ち上げで何故かそんな話をしていまして。
じゃあ彼女が姫なら殿はあの人だね。忍びはあの人以外考えられないね。なんて、ひとりひとりに色々と役割分担をしたものです。本当はスタッフひとりひとりにもあるのですが。因みに、代表は「爺」
今回は会社を題材にした公演だったので、それを会社に当てはめただけ。
相変わらずの単純な発想に、自分でも吃驚です。

   
■有言実行
とあるビルの一室。骨董品を扱う小さな会社で。
そのとても高価でかなり貴重なワレモノに興味を持った殿、交渉の結果、かなり高額で購入する事にした。そんな殿の無駄遣い癖に意見する影丸。
そこへ入って来たのは、ワレモノを強奪する為にビルに侵入したギャング風のひでポン。殿と影丸に怪しまれ、思わず銃口を2人に向ける。 ひでポンの呼ぶ声を聞きつけてやってきたよしりんだが、非常事態にどうしていいか解らず、戸惑うギャング風の2人。
騒ぎを聞きつけて慌てて戻ってきた骨董品会社の社員・野村も、社長から護身用にと受け取っていた水鉄砲をギャング風の2人に向けてはみる。一応。
ひでポンの拳銃が火を噴くが、コウちゃんが手渡した拳銃はただの拳銃型ライターだった。慌てるギャング風の2人。冷静に水鉄砲で対応する野村。
そして、その騒ぎを収拾したのは意外な物だった。

「わりといい話風」な、演目で締めくくった第2回、第3回公演。
今回は最後までバカ騒ぎしてみました。
色々の演目に登場した色々なキャラクターが大集結。
そんな感じで、
第4回公演「不言実行」は実行終了。

   
□ 第4回公演を終えて
事の始まりは第3回公演【HOLIDAY】
休日、をテーマにした演目で固めた公演だったもので、その当時から考えていた
会社、をテーマにした演目は外したのです。

そんなものが何本かあって、それが何だか勿体ない気がして、
どうせなら公演丸ごと全部会社のコントにしよう。
どうせなら架空のビルを設定してその中で起こっている物語にしよう。
どうせなら何本かの話をリンクさせよう。
なんて感じでああいう形になりまして。

書き始めた当初はこんなに話を繋げる予定ではなかったのですが、
書いているうちにそんな風に話を繋げていくという事自体が面白くなってきてしまって、
そんな感じでこういう形になりました。

実際の舞台をご覧になった皆様方には、今回の台本は非常に頭を使わずに書いたもののように写ったかと思われますが、
書き進めるうちにどんどん時間軸がずれていくせいで全体の構成をする作業は難解、
話が繋がっているだけに他の演目と被れない役柄も出てきて配役決めの作業は難航、
そして各々の仕事が忙しいせいで稽古に役者全員が揃う事は滅多になく、それによって稽古もなかなか思い通り進まず、そうなると映像の撮影するのにもなかなか日程が合わず、仕事が忙しいスタッフとはなかなか打ち合わせもできず、
今振り返ってみるとよくまぁちゃんと公演ができたものだと驚くような状態だったのですが。


メンバーがなかなか稽古場に揃う事が無いなかで、役者は空いた時間を見つけては自主的に稽古をし、スタッフは各々の仕事を確実に進めてくれていたり、まぁ本当に頼りになるひとたち。
チームCAPSULEとしての連体がしっかりと確立された事を実感できた公演だったと思っております。
そんな素敵な仲間達に囲まれて、わたくし三国一の幸せ者に御座いますよ。ほんとうに。


さて。
公演に御来場戴いた皆々様、本当にどうもありがとうございました。
「CAPSULE至上最大のバカコント」を裏テーマに掲げた第4回公演【不言実行】、如何だったでしょうか?
今度は、また、違う形で、
皆様とお会いしたく思います。
是非。
然らば御免。

[作・演出 武田美穂]
 

 

actor

武田美穂
松本奈緒子
大村朋子
寺元彩乃
川原南風
鈴木祥子


staff

舞台監督/照明 大江芳樹
演出補佐 小川尚子
音響 岩渕民里子
制作 河田春菜
長澤真理絵
宮田碧