【作品解説】

□ title  1. バック転  2. 100万円  3. メガネ軍隊  4. same? different.
□ title  5. 対決  6. ハウス  7. クイズ  8. と、いうわけで。

 

■バック転
おかしな空間に入り込んでしまった見ず知らずの2人。
その世界の中では〈視覚〉を奪われてしまったひとりが、〈視覚以外の全ての感覚〉を奪われたもうひとりに動かされ、翻弄されつつも、出口を見つけ出そうと新しい空間へと繋がるドアを次々と開けていく。

観る方も演じる方も想像力がいるこの物語。
オチになる言葉をタイトルにしてしまった、ある意味とても革命的な作品。“オチ主義者”でない作者の一端が垣間見える。

   
■100万円
部屋を掃除していて見つけた1枚の宝クジ。以前、友人の小松が気まぐれにくれたものだった。
気になって調べてみるとなんと100万円が当たっている。だが当たったことがばれてしまったら返せと言われるに違いない。とりあえず換金する為に部屋を出ようとするものの、小松が家にやって来る。なんとかこの場を逃れようと色々画策を練るのだが・・・。

「疑心暗鬼」を描いたこのコント。個人的には、役者として影マイクの〈心の声〉に合わせて演技するというヤツをやってみたかった。パントマイムも多くて楽しかった。
しかし声だけ先に録音するという慣れない行為に四苦八苦・・・。音響班はさぞ迷惑だった事であろう。

   
■メガネ軍隊
我々はメガネ軍隊。勿論、メガネは顔の一部である。上官を含め隊員達は決してメガネを手放してはならない。
軍では日夜、厳しい訓練が繰り返されている。そんな隊員達のリーダー的存在であるマクガイバー。彼の良き友人である心優しき青年ダニエル。そして新入りのデビットも加わり、3人の友情が育くまれていくように見えたものの、ある出来事をきっかけにマクガイバーが実はコンタクトをしているのがバレてしまう・・・。

メガネにまつわるエピソードを集めた、CAPSULEの誇るべきバカコント。シリーズ化の予感。

   
■same? different.
〈前半〉とある小さなバー。そこで「彼」を待つ女性がひとり。店内にはジャズが流れる。彼との想い出の曲。
女:あっ・・・。 バーテン:・・・お好きなんですか?
女:えぇ。 バーテン:いい曲ですよね。
女:そうですね・・・。 女:(独白)私は少しだけ涙が出ました。

〈後半〉とある小さな美容室。そこに初めてやってきた女性がひとり。破天荒な美容師の振る舞いに動揺を隠せない。シャンプーが飛び散り、目に入る。
女:あっ・・・。 美容師:目、入りました?
女:えぇ。 美容師:痛いっすか?
女:そうですね・・・。 女:(独白)私は少しだけ涙が出ました。

別々の2つのシチュエーションで〈客〉である人物の台詞は全て一緒。
前半の4分半、コントを観に来た客を一切笑わせないという恐らく誰もやっていないであろう事をやってしまった、今回の公演の中で最も挑戦的な作品。作者は結構お気に入りの一作。



   
■対決
修学旅行先の夜の旅館。眠れない2人が楽し気にジャンケンをしている。
しかし些細な小競り合いが次第にエスカレート。様々な方法で〈対決〉をしていく。

台詞はほとんどなく、ほぼ動きだけのコント。
稽古ではスリ傷、打撲などのケガ絶えず・・・。まさに血と汗と涙の滲んだ作品。

   
■ハウス
鍋の中。この家の今晩の夕食はクリームシチューらしい。
“固いから”と、一番最初に入れられたニンジンの元に、毒のある芽を取られた“丸くて人のいい”ジャガイモが入ってくる。2人の会話が進むうち、“煮込むと溶けてなくなってしまう”為、やさぐれてしまったタマネギが入ってくる。食べられてしまえば皆同じだとニンジンとジャガイモに諭され、目が醒めるタマネギ。3人に友情が芽生えるも、次に入ってきたのはリンゴ。どうやら作り主は何かを間違えているらしい・・・。

鍋の中での出来事という実はとても規模の小さな話。出演者の役名は当然、全員野菜。
しかし最後には三角コーナーに捨てられてしまう、可哀相な人達である。

   
■クイズ
部屋でテレビを見ている埼玉県在住・コンビニのアルバイト店員、高橋さん。何気ない一言からクイズ番組の世界の中に入り込んでしまう。
胡散臭い司会者・ジャッキー江戸川が繰り出す支離滅裂な問題にはじめは戸惑う高橋さんだったが、次第に要領を得てチャンピオンを苦しめていく。果たしてクイズ王・アンサー門脇を倒し、賞金の1,000万円を手に入れる事はできるのか?

「巻き込まれ型」の不条理バカコント。
一日でダーッと書き上げたこの台本が音響・照明の演出効果も手伝って、今回一番派手な作品に仕上がった。

   
■と、いうわけで。
〈タケダ〉の部屋。パソコンに向かってコントの台本を打っている。
そこへ劇団仲間の〈マツモト〉がやって来る。2人は今日行われる話し合いの席で、みんなにある提案をするつもりでいた。
そして〈オオムラ〉〈テラモト〉〈カワハラ〉〈ヤチタ〉が到着。〈タケダ〉が恐る恐る話を切り出す。
「・・・皆さん、コントをやりませんか?」

今回の公演のラストはCAPSULEを始めることになった過程を1本のコントにしたエピローグ的な作品。かなり脚色はしてあるものの、大筋としてはそんなに違っていないと思う。あのような感じで我々の活動はスタートしたのです。因みに実際の話し合いの時にみんなに見せた台本は「クイズ」でした。

   

□ 第1回公演を終えて
改めてみてみるとなんと統一感の無い内容なのか・・・。偶然にも全てバラバラだったので、それなりにまとまった気もしますが。
そして並べてみるとかなりシンプルなタイトル。しかし内容は全体的にちょっと無駄が多かった気も・・・。今回の反省点です。もっと洗練された舞台を目指したいものです。
このような形態のコントをやっていると一人一人が色々なキャラクターを演じる事になります。男や、女や、場合によっては人間以外のものなども。
個人的にはそれがとても楽しかったです。通常の芝居ではなかなか味わう事のできない醍醐味を感じました。
あとは誰かが代わりに書いてくれればもっと楽しいんだがなぁー。

そして公演タイトルの【Placebo(プラシーボ)】とは 偽薬、つまり“ニセモノの薬”。
来て頂いた方々が笑う事でちょっと楽な気分になってくれたらいいなぁ、と願って付けたものです。
我々の創り出した偽物の世界を皆さんは楽しんで頂けたのでしょうか。
日常生活の中でふとした時にCAPSULEのコントを思い出してニヤリとして頂ければ最高に嬉しいです。まさにやった甲斐があったというものです。

さて、これからのコントユニットCAPSULE。次はどっちに転がっていこうかと色々模索をしている最中です。
それにしても笑いの世界は奥が深い。まだまだ探究の日々は続く・・・。

[作・演出 武田美穂]
 

 

actor

武田美穂
松本奈緒子
大村朋子
寺元彩乃
川原南風
谷地田未緒

 

staff

舞台監督/照明 大江芳樹
演出補佐 小川尚子
音響 岩渕民里子